文字は、対象ユーザーに対して、訴求するための大変重要なパーツで、販促物の制作においてもなくてはならない役割を担っています。そのため、販促物の発注担当者は、文字の性質を十分に理解して、ターゲットに向けてパワフルでインパクトのあるメッセージをダイレクトに届ける必要があります。
みなさんは、文字のデザインについて、どれくらいの知識をお持ちですか?また、どうすれば自分が思い描く効果的な販促物に仕上がるか、ご存知でしょうか?もし、下記のことで思い当たることがあれば、きっと本記事に興味を持っていただけると思います。
- 販促物の文字バランスが悪く、ターゲットに情報が正しく伝わっているか心配・・・
- 販促物の制作に「文字デザイン」に関する知識が必要だなんて考えたこともなかった・・・
- 販促物の発注担当者として、文字デザインについてゼロから学びたい・・・
「こんな販促物を制作したい!」という思いがあっても、文字デザインに関する正しい知識がなければ、効果的な販促物を作ることは難しいでしょう。なので、まずは、どんな人をターゲットとして販促物を作るのか、明確なユーザーイメージを持ちましょう。ユーザーを意識して文字組版を行うことが「伝わる販促物」を作るうえで非常に大切な要素となります。そのため、ターゲットが女性なのかお年寄りなのかによって表現の仕方もおのずと変わります。
本記事では、販促物の発注担当者が知っておきたい文字デザインを意識した「伝わる販促物」の基本ルールについてご紹介します。また、文字組版のルールや禁則処理と呼ばれる禁止事項にも触れていきたいと思います。今後の販促物制作のアイデアとしてお役立ていただければ幸いです。
目次
書体と文字の大きさ
図1:広告文の基本構成
まずは、書体と文字の大きさについて基礎から押さえていきましょう。これを整えるだけでも全体の印象が大きく変わります。
イメージに合う書体を選ぼう
販促物を制作する際は、ターゲットと広告文の内容が合致する書体を選びましょう。ちなみに、書体は、フォントとも呼ばれています。例えば、花屋さんのチラシで女性がターゲットならエレガントな明朝体を選択した方が良いですし、対象者がリラックスすることを目的に来店するマッサージ店の広告なら癒しが感じられる書体の方が良いでしょう。
フォントデザインのルールとしては、対象者に与える印象以外にも「可読性」に意識を置く必要があります。デザイン性の高いものは、見た目は良いのですが、「読みやすさ」となると話は別です。飾り付きや手書き風のフォントは、見出し要素に対して与えるのであれば問題ありませんが、本文などの内部要素に対して与えると読みづらくなりますので、注意が必要です。
文字の大きさ
販促物を初めて作る際は、各コンテンツがどの要素に含まれるのか、明確することから始めてください。ここが曖昧なままだと、文字の大きさを決めることができず、販促物に統一感が出ません。例えば、販促物には、下記のような要素が含まれています。
- タイトル
- 大見出し、中見出し、小見出し
- 本文
特に見出しの親要素と子要素の関係については、はっきりとさせておきましょう。全体の関係性が決まったら、文字の大きさ(フォントサイズ)を決めていきます。
「対象ユーザーがお年寄りなら本文も大きめの方がいいな。」
「女の子向けなら、丸文字のようなフォントがいいな。」
など、タイトルや見出し、本文の文字サイズを調整して統一感を出します。販促物の要素が3種類なら、3種類の文字サイズを準備して各要素に割り振るようにしてください。要素の数以上に、いろいろな数値の文字サイズを与えると統一感が出ないので注意してください。
文字組版のルール
販促物の効果を上げるためにも文字組版のルールについて押さえていきましょう。文字間と行間、ベースライン、禁則処理について簡単に知るだけでも、「伝わる販促物」とは、どういったものなのかが理解できるようになります。
文字間と行間とベースライン
図2:文字間と行間とベースラインについて
一部参照:TENSENWEB「いつもの文字組みをもっと魅力的に見せる、6つの基本知識。」
文字間とは、文字と文字の間にできる隙間のことです。横との関係性を決める重要な要素です。一方で、行間とは、縦ラインの隙間を決定する要素です。ベースラインとは、文字に統一感を出すために意識すべき大切なことです。
(1)文字間
文字と文字の間隔が等しく見えるようにするためには、カーニングと呼ばれる字間調整作業が必要です。この作業を怠るとデフォルトのフォントが持つ余白によって統一感のないバラバラな文字間隔があいてしまいます。基本的に、文字間隔を詰めて組むと対象者に対して「まとまりのあるコンテンツ」だという印象を与えることができます。逆に、文字間隔をあけると1文字ずつの個性が強くなり、どっしりと安定した印象を与えることができます。特に、タイトルや見出しなどに文字間隔をあける技が利用されるので、ぜひ試してみてください。
(2)行間
文字と文字の行間は、文字サイズの70%前後に設定すると読みやすいです。選択したフォントによって多少の微調整が必要ですが、デフォルトで70%前後に設定していれば、太字になってもコンテンツ幅が大きくなっても行間が詰まるなどの窮屈さ生じません。比較的、小さな文字を使うことがあれば、文字サイズの50%で設定し、大きな文字を使うことがあれば、80%にするなど自分なりにルールを設けておくと販促物に統一感が出ます。
(3)ベースライン
今後、広告文を記載する場合は、文字のベースラインを意識してください。ベースラインがずれてしまうと上記の図のように、文字にばらつきが発生してしまいます。特に、本文中に半角カッコを使う方は、ベースラインからカッコがずれてしまうので、全角カッコを使うようにしましょう。基本的に横組みの場合は、下のベースラインに揃えて縦組みの場合は、真ん中に揃えるなどのルールがあります。
禁則処理
日本語の文書作成や組版において、句読点や疑問符、括弧類などの「約物」が行頭・行末などにあってはならないなどとされる禁止事項を修正することを禁則処理といいます。具体的には、ルールに則っていない誤りが確認できる箇所を調整して文字を詰めたり、文章の長さを調整する作業を指す言葉です。禁則処理には、いろいろなルールがあり、会社によって取り決めが明確に異なります。一般的とされるものをご紹介すると下記のようなものがあります。
【禁則事項1】:行頭禁則文字
行の最初に来てはいけない文字は、下記の通りです。
- 拗促音:ぁぃぅぇぉっゃゅょァィゥェォッャュョなど
- 中点や音引: -(ハイフン)・(中点/中黒)ー(音引き)―(ダーシ)など
- 終わり(受け)括弧類:≫]】>」』)}など
- 句読点:、,.。など
- その他約物:ゝ?:;/々!など
【禁則事項2】:行末禁則文字
行の末尾に来てはいけない文字は、下記の通りです。
- 始め括弧類:({【<「『≪[など
【禁則事項3】分離禁止文字
行をまたぐことが禁止されている文字は、下記の通りです。
- 連数字や組数字:1,000 1/4など
- 英単語:messageなど
最初は、禁則処理まで、文章コンテンツの制作に手が回らないかもしれませんが、このような注意点を知っておくことでワンランク上の文章を書くことができます。
ひと手間を意識して見やすくする
今までの販促物の制作業務にプラスαを意識すると、文字はより見やすくなります。文字組版で明日から使える小技を2つほどピックアップします。
(1)ひらがなやカタカナ、句読点、記号は、原則として詰める
漢字は、そのままでも問題ありませんが、ひらがなやカタカナについては、原則として詰めることを心掛けてください。また、句読点や記号についても適度に詰めると、文章に統一感が出やすくなります。
(2)カギカッコを一段階、細い書体にする
雑誌を定期的に購読されている方であればお気づきかもしれませんが、カギカッコが細い書体を使用しているケースが多く見受けられます。なぜ、このような加工が施されているのかというとカギカッコが上品に見えるからです。同系の書体でカギカッコだけ、一段階、細い書体を選ぶだけですので、覚えておきましょう。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回は、販促物の発注担当者が知っておきたい文字デザインを意識した「伝わる販促物」の基本ルールについてご紹介しました。紙の販促物で見込み客に情報を伝えるためには、文字が人にどのような影響を与えるのかについて熟知しておかなければいけません。
消費者は、あなたが書いた広告文を見て、購入するかどうかを慎重に検討します。文章を読ませる、見せる仕事をしている広告担当者は、今まで以上に文字組版について意識する事で、利用するフォントやフォントサイズ、行間、ベースライン、禁則処理に至るまで使いこなす事で、より伝わる販促物を作成する事ができるのです。弊社のブログには、「伝わる販促物」を制作するために参考になる情報が数多く掲載されています。ぜひ、参考にしていただけますと幸いです。